任意整理(債務整理)の費用相場はいくら?費用を無料や安くする方法や払えない時の対処法は?専門家が解説

任意整理(債務整理)の費用相場

任意整理の費用はどれくらいかかるの?

任意整理の費用が払えないときはどうすればよい?

任意整理とは債務整理の一種であり、裁判所を介さずに借金の減額や支払いの猶予が可能となる手続きです。

債務整理の中では最も手続きにかかる労力の負担が軽く、そのため、費用も比較的低額で済む傾向にあります。

それでも、任意整理をするためには、ある程度の費用が必要です。

とはいえ、借金の返済に追われていると、まとまった費用を払えない方も多いことでしょう。

そこで今回は、任意整理にかかる費用の相場をご紹介し、併せて、費用を安くする方法や払えないときの対処法も解説します。

 この記事でわかること
  • 任意整理の費用は借入先1社につき4~7万円程度が相場
  • 任意整理をするなら費用がかかっても弁護士・司法書士への依頼がおすすめ
  • 任意整理の着手金が無料または分割払いの弁護士・司法書士の事務所も多い
  • 事務所によって任意整理の費用は異なる
  • 任意整理の費用が払えないときは法テラスの利用がおすすめ

本記事を監修した専門家

川端 克成 / 元弁護士 弁護士として約15年間稼働。債務整理だけでなく、離婚・相続・交通事故・刑事事件などをはじめとして幅広い分野を担当。現在では、弁護士としての経験を活かしてお金の問題を解決できる記事を執筆。
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任意整理にかかる費用相場はいくら?

任意整理でかかる費用は借入先1社に月4万円から7万円程度

任意整理にかかる費用の相場は、借入先1社につき、おおよそ4~7万円程度(税別)です。

借入先が5社あるとすれば、総額で20~35万円程度(税別)がおおよその相場となります。

一般的に任意整理は弁護士または司法書士に依頼して行うため、これだけの費用がかかるのです。

ただし、弁護士・司法書士の費用は各事務所が独自に決めているため、事務所によって異なることに注意する必要があります。

この記事でご紹介する相場は、あくまでも大まかな目安として参考になさってください。

任意整理の費用の内訳と相場は以下のとおりです。

 任意整理にかかる費用の内訳と相場

以下では、費目ごとに、どのような費用なのか、どれくらいの金額が必要なのかをご説明します。

なお、この記事でご紹介する金額はすべて「税別」であることにご注意ください。

任意整理の法律相談料

法律相談料は原則として有料であり、相場は30分につき5,000円程度です。

ただし、債務整理については無料で法律相談を受け付けている弁護士・司法書士の事務所も数多くあります。

無料相談を利用すれば、法律相談料はかかりません。

法律相談とは

法律相談料とは、弁護士・司法書士に法律問題を相談し、専門的なアドバイスを受けることです。

任意整理を依頼するためには、まず法律相談を利用する必要があります。

弁護士・司法書士に借金額や借入の経緯、収入・資産の状況などを伝えて専門的なアドバイスを受け、解決方法を検討するためです。

相談の結果、任意整理をすることに決まったら、弁護士・司法書士へ正式に依頼します。

川端さん
川端さん

元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

法律相談料が有料か無料か、無料の場合でもどこまで無料で利用できるのかは、事務所によって異なります。何度でも無料の事務所もありますが、初回の30分か1時間のみが無料という事務所が比較的多いです。相談前に無料の範囲を確認しておきましょう。

着手金

任意整理の着手金の相場

任意整理の「着手金」の相場は、借入先1社につき2~5万円程度です。

着手金とは

着手金とは、弁護士・司法書士が依頼を受けた案件の処理にとりかかるために必要な費用のことです。

着手金は、原則として依頼時に支払う必要があります。

また、途中で解約した場合や、結果に納得できない場合でも、基本的には返金されないことに注意が必要です。

川端さん
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元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

任意整理費用の内訳も事務所によって異なります。着手金と報酬金(基本報酬)を分けず、「手数料」などの名目でまとめて請求する事務所も少なくありません。弁護士・司法書士に依頼する際には、後から費用が発生するかどうかを確認し、トータルの費用について見積もりを取ることが大切です。

着手金は債務整理に強い事務所に依頼することで、無料で対応してくれることもあります。

基本報酬

任意整理の基本報酬の相場

任意整理の「基本報酬」の相場は、1社につき2~5万円程度です。

基本報酬とは

基本報酬とは、弁護士・司法書士が債権者と任意整理の交渉をして、和解が成立したときに発生する報酬金のことです。
つまり、任意整理の手続きが成功した場合に支払う「成功報酬」に当たります。

ただし、着手金と基本報酬が同額であることは少なく、着手金の方が高めに設定されていることが多い傾向にあります。

「着手金+基本報酬」の合計額の相場は4~7万円程度となっています。

川端さん
川端さん

元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

着手金が無料や安いの事務所では、基本報酬(成功報酬)が高額に設定されていることもあります。依頼前に必ず、トータルでかかる費用は確認するようにしましょう。

減額報酬

任意整理の減額報酬の相場

「減額報酬」の相場は、任意整理によって元金を減額した金額の10%程度です。

減額報酬とは

減額報酬とは、弁護士・司法書士が債権者と交渉することにより借金のが金の減額に成功した場合に発生する報酬金のことです。

任意整理では基本的に元金の減額はできないため、減額報酬が発生するケースは少数です。

以前は「グレーゾーン金利」の影響で元金を減額できるケースも多かったのですが、現在では元金を減額できるケースは少なくなっています。

グレーゾーン金利とは

グレーゾーン金利とは、利息制限法の上限金利と出資法の上限金利の間の金利のことです。

違法ではあるものの、罰則がなかったことから「グレーゾーン」と呼ばれていました。

利息制限法の上限金利は、借入金額に応じて異なりますが年15~20%です。

出資法の上限金利は、2000年6月1日から2010年6月17日まで年29.2%とされていました。

この「年15~20%」と「年29.2%」の間の金利がグレーゾーン金利です。

出資法の上限金利を超えない限りは罰則が適用されたないため、多くの貸金業者が上限または上限に近い金利で貸し出しをしていました。

ただ、利息制限法の上限金利を超える利息の支払いは、超えた部分が無効であり、利息の支払いすぎが生じます。

支払いすぎた利息は元金に充当できるので、以前はグレーゾーン金利の影響のために任意整理で元金を減額できるケースが多かったのです。

しかし、2010年6月18日から改正出資法が施行されたことにより、グレーゾーン金利はなくなりました。

そのため、現在では利息の支払いが生じなくなっており、元金を減額できるケースは少なくなっているのです。

任意整理で元金を減額できなかった場合、減額報酬は発生しません。

川端さん
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元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

事務所によっては、「元金」ではなく「返済額」を減額した場合に、減額報酬を請求するところがあるかもしれません。任意整理では将来利息(今後発生する利息)をカットすることが可能なので、今後の返済額は減額されます。債権者数が多い場合には総返済額が数百万円減ることも珍しくありません。その場合に減額報酬を請求されると、数十万円を支払わなければなりません。減額報酬が「元金」と「返済額」のどちらを減額した場合に発生するのかについても、弁護士・司法書士への依頼時に確認しておく必要があります。

過払い金報酬

「過払い金報酬」の相場は、回収した過払い金の額の10~25%程度です。

過払い金報酬とは

過払い金報酬とは、弁護士・司法書士が依頼者の過払い金を回収した場合に発生する報酬金のことです。
支払いすぎた利息を元金に充当しきれずに余る場合、余った金額が「過払い金」となります。

過払い金を貸金業者との交渉で回収した場合は10~15%程度、裁判をして回収した場合は15~25%程度を設定している事務所が多いです。

ただし、2010年6月18日移行はグレーゾーン金利がなくなったことにより、現在では過払い金を回収できるケースが少なくなっています。

過払い金を回収できなかった場合、過払い金報酬は発生しません。

過払い金を回収したい場合は、過払い金におすすめの事務所を検討しましょう。

川端さん
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元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

過払い金報酬が発生する場合は、弁護士・司法書士が貸金業者から回収した過払い金の中から差し引きます。したがって、依頼者が手出しをして支払う必要はありません。

返済代行手数料

任意整理の返済代行料の費用

返済代行手数料の相場は、1社につき1,000円程度です。

返済代行とは

返済代行とは、任意整理の手続きが終了した後の各債権者への返済(振込み)を弁護士・司法書士の事務所が代わりに行ってくれるサービスのことです。
振込の代行には手間がかかるので、手数料が発生します。この手数料のことを「返済代行手数料」といいます。

依頼者は毎月、各債権者への返済額の合計金額を事務所の口座へ振り込みます。

そして、事務所のスタッフが各債権者への振込を代行してくれるのです。

債権者が5社ある場合、返済代行を利用すると合計5,000円の手数料がかかることになります。

各債権者への返済を行う際の振込手数料は、通常、返済代行手数料に含まれています。

ただし、事務所の口座へ返済資金を振り込む際の振込手数料は、依頼者負担とされるのが通常です。

返済代行は、必ずしも利用しなければならないわけではありません。すべての事務所が返済代行サービスを提供しているわけでもありません。

返済代行を利用するメリットは、以下のとおりです。振込忘れが不安な方や、債権者とのやりとりをしたくないという方は、利用してみるのもよいでしょう。

 返済代行を利用するメリット
  • 振込先が一本化されるので返済管理が楽になる
  • 支払い忘れを防げる
  • 支払い忘れた場合、債権者は弁護士・司法書士に連絡する
  • 完済したときも、債権者は弁護士・司法書士に連絡する
  • 任意整理したことを家族に知られにくい
川端さん
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元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

返済代行手数料は完済するまで毎月かかるので、費用負担が長期間続きます。ご自身にとって本当に必要かどうかを検討すべきです。なお、返済代行を利用しても、途中で取りやめることも可能です。逆に、途中から返済代行を利用することもできます。

実費

任意整理の実費

任意整理に必要な実費の相場は、数千円程度です。

 任意整理に必要な実費
  • 受任通知や和解書の郵送料
  • 電話代
  • 弁護士・司法書士事務所のコピー代 など

事務所によっては、「事務手数料」などの名目で数万円を請求するところもあるので、注意が必要です。

自分で任意整理をすれば、総額で数千円程度の費用しかかかりません。

川端さん
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元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

自分で任意整理をすると費用を抑えることができますが、思うように借金を減らせないことも多いものです。
ケースにもよりますが、弁護士・司法書士に費用を支払ってでも依頼して返済額を減らした方が、金銭的なメリットが大きくなることが多いといえます。

任意整理の費用を安く抑える方法

任意整理の費用を安く抑える方法は費用が安い弁護事務所を利用するか、司法書士へ依頼するか、法テラスを利用するか

任意整理を弁護士・司法書士に依頼するための費用は、決して安いものではありません。

ただ、借金の返済に追われていると、まとまった金額を用意するのが難しい方も多いことでしょう。

任意整理の費用を少しでも安く抑えるためには、次の方法がおすすめです。

それでは、ひとつずつみていきましょう。

費用が安い事務所を探す

弁護士・司法書士の費用は各事務所が独自に決めているため、安い事務所から高い事務所までさまざまなところがあります。

できる限り費用が安い事務所を探して依頼することで、任意整理の費用を抑えることが可能です。

ただし、相場よりも大幅に費用が安い事務所には注意した方がよいでしょう。

一概にはいえませんが、経験が浅い、自信がない、依頼者を大量に集めたい、などの理由で費用が安く設定されている可能性があります。

納得のいく結果を得るためには、任意整理をはじめとする債務整理におすすめの弁護士・司法書士に依頼することが大切です。

信頼できる弁護士・司法書士の事務所の中から、できる限り費用が安い事務所を探すようにしましょう。

川端さん
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元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

実績が豊富な弁護士・司法書士の事務所は、相場の範囲内で料金を設定しているところがほとんどです。責任をもって案件を処理するためには、どうしても相場程度の費用が必要となります。その一方で、相場を超えるような高額の料金を設定すると、多くの方にご利用いただくことが難しくなります。結局、多くの方に満足していただくためには、相場の範囲内の料金が妥当ということになるのです。任意整理の費用相場は、「適正料金」だと言い換えることもできるでしょう。

司法書士に依頼する

弁護士よりも司法書士の事務所の方が、依頼費用は低い傾向にあります。

任意整理の費用を少しでも安く抑えるためには、弁護士ではなく司法書士を選ぶこともひとつの方法です。

ただし、弁護士費用と司法書士費用の相場は大きく異なるわけではありません。

どちらにしても具体的な金額は事務所によって異なるため、まずは弁護士も含めて債務整理に強い事務所を探す方がよいでしょう。

川端さん
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元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

1社で140万円を超える借入先がある場合、司法書士には任意整理を依頼できないことにもご注意ください。この点については、後ほど詳しくご説明します。

法テラスの「民事法律扶助制度」を利用すれば、一般の弁護士・司法書士事務所の報酬規程よりも低料金で任意整理を依頼できます。

民事法律扶助制度とは

民事法律扶助制度とは、資力が乏しい方を対象として、弁護士・司法書士への相談料や依頼費用を立て替えてくれる制度のことです。

相談料は償還する必要がありませんが、依頼費用は法テラスへ償還していく必要があります。

民事法律扶助制度における任意整理の弁護士費用は次の表に記載した通りであり、一般的な相場よりも低料金となっています。

債権者数着手金報酬金実費合計
1~5社110,000円0円25,000円135,000円
6~10社154,000円0円25,000円179,000円
11~20社176,000円0円30,000円206,000円
21社以上198,000円0円35,000円233,000円
引用元:法テラス|立て替え基準表
川端さん
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元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

法テラスを利用して任意整理を依頼した場合でも、低料金だからといって弁護士・司法書士が手を抜くことはないはずです。ただし、どれだけの熱意を持って取り組んでくれるかは、弁護士・司法書士によって大きく異なります。ですので、信頼できる弁護士・司法書士を選ぶことが大切なのです。

任意整理の費用が払えないときの対処法

任意整理の費用が払えないときの対処法

任意整理の依頼費用をできる限り安く抑えたとしても、一度には支払えない方も多いことでしょう。

そんなときには、次の対処法が考えられます。

それぞれの対処法には注意点もありますので、以下でご説明します。

着手金が無料の事務所に依頼する

着手金が無料の事務所に任意整理を依頼すれば、初期費用がかかりません。

任意整理手続きが終了した後、報酬金を支払うことになります。

注意点としては、高額の報酬金を請求する事務所もあるということです。

着手金が無料でも報酬金が高額であれば、トータルで見ると費用の負担が重くなってしまいます。

依頼前には必ず、トータルで費用がいくらかかるのかを確認しましょう。

川端さん
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元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

弁護士・司法書士への依頼後は受任通知の送付により督促と返済が止まりますので、報酬金の支払いのためにお金を貯めていきましょう。報酬金の分割払いが可能かどうかも、依頼前に確認しておくべきです。

着手金の分割払いが可能な事務所に依頼する

着手金が必要な事務所でも、最近は分割払いに応じるところが多くなっています。

分割回数や毎月の支払額は事務所によって異なり、事案によっても異なります。

弁護士・司法書士と協議して、支払い可能なプランを柔軟に検討するのが一般的です。

ただし、支払期間が長引くと、債権者から裁判を起こされる可能性が高まることにご注意ください。

基本的には着手金を完済するまで任意整理の交渉は行われないため、債権者によっては待ちきれずに裁判を起こしてくることもあるのです。

裁判のリスクを回避するためには、できる限り6ヵ月以内、長くても1年以内に着手金を完済することが望ましいです。

川端さん
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元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

裁判を起こされたら、裁判所から自宅に書類が届きます。書類が届いたら、すぐ弁護士・司法書士に連絡してください。適切に対処すれば、裁判を起こされた借金でも分割払いの和解をすることができます。

法テラスの民事法律扶助制度を利用すれば、弁護士・司法書士への依頼費用は法テラスが立て替えて支払ってくれます。

立替金は法テラスへ返済する必要がありますが、毎月5,000円~1万円ずつの分割払いとなるので、負担を抑えることが可能です。

生活保護を受給している方などは、法テラスへの返済が免除されることもあります。

民事法律扶助制度を利用するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。

特に、収入に関する条件と資産に関する条件が重要です。

収入については、申込者と配偶者の手取り月収が次の基準を満たさなければなりません。

※()内の金額は、東京、大阪など生活保護の基準で一級地とされている地域における基準額です。

同居する家族の人数
(本人を含む)
手取り月収額の上限家賃または住宅ローンを負担している場合に加算できる金額の上限
1人182,000円
(20万0,200円)
4万1,000円
(5万3,000円)
2人25万1,000円
(27万6,100円)
5万3,000円
(6万8,000円)
3人27万2,000円
(29万9,200円)
6万6,000円
(8万5,000円)
4人29万9,000円
(32万8,900円)
7万1,000円
(9万2,000円)
引用元:法テラス|費用を立て替えてもらいたい

資産については、申込者と配偶者の保有資産の合計額が次の基準を満たさなければなりません。

同居する家族の人数
(本人を含む)
資産合計額の上限
1人180万円
2人250万円
3人270万円
4人300万円
引用元:法テラス|費用を立て替えてもらいたい
川端さん
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元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

法テラスに直接申し込むと、原則として弁護士・司法書士を選べないことにご注意ください。民事法律扶助制度を利用するには、法テラスと契約している弁護士・司法書士をご自身で選んだ後に申し込むことも可能です。先に選んだ弁護士・司法書士を通じて申し込むのです。この申込み方法のことを「持ち込み方式」といいます。債務整理に強い事務所の中から、法テラスへの持ち込み方式に対応しているところを探すとよいでしょう。

自分で任意整理をする

自分で任意整理をすれば、弁護士・司法書士の費用がかかりません。

ただし、任意整理の手続きを的確に行うためには、専門的な知識と高度な交渉力が要求されるため自分での手続きはおすすめできません。

一般的に、債務者が自身で債権者と対等に交渉することは極めて困難です。

具体的には、次のようなデメリットが生じることが多いので、注意しましょう。

自分で任意整理をするデメリット
  • 債権者からの督促が止まらない
  • 利息引き直し計算でミスが生じやすい
  • 債権者から不利な和解案を押しつけられることが多い
  • 過払い金が発生していても取り戻せないことがある

自力での交渉が難しい場合には、「特定調停」を申し立てるという方法もあります。

特定調停とは

特定調停とは、簡易裁判所が債権者と債務者の間に入って任意整理と同じような交渉を行い、和解を目指す手続きのことです。

特定調停は簡易裁判所への申立てが必要ですが、費用は収入印紙や切手代を合わせて1社につき1,000円程度で済みます。

債権者との交渉では簡易裁判所の調停委員会が間に入ってくれるため、弁護士・司法書士に依頼しなくても進めやすい手続きです。

川端さん
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元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

特定調停に応じない債権者もいることに注意しなければなりません。債権者としては、債務者が特定調停を申し立てたとしても弁護士・司法書士に依頼していなければ、直接の取り立てが許されているからです。債権者との交渉がスムーズに進まない場合は、弁護士・司法書士に任意整理の手続きをすべて任せる方が望ましいといえるでしょう。

任意整理とはどのような制度?

任意整理とはどのような制度?

任意整理とは債権者と直接交渉することで借金を減額してもらい、返済期間や毎月の返済額も変更できる手続きのことです。

他の債務整理よりも手続きにかかる労力と費用の負担が軽く、柔軟な解決が可能という特徴があります。

ここでは、任意整理の手続きの流れやメリット・デメリットをご紹介します。

弁護士・司法書士に費用を支払ってまで任意整理をする価値があるかどうかを判断するためにも、基本的なことを確認していきましょう。

まず、任意整理の手続きは以下の流れで進みます。

弁護士・司法書士への相談・依頼

専門的なアドバイスを受けて解決方法を検討する
任意整理することに決まったら依頼する
着手金の支払い方法も協議する

受任通知の送付

弁護士・司法書士が各債権者へ受任通知を送付する
取引履歴の開示請求も同時に行う
受任通知が債権者に届くと督促・返済が止まる

利息引き直し計算

弁護士・司法書士が取引履歴に基づき利息引き直し計算を行う
払い過ぎた利息があれば元金に充当する
過払い金が発生している場合は返還請求も行う

和解案の検討

依頼者の収入や生活状況に応じて和解案を検討する各社の和解傾向を踏まえて全体的な返済計画を検討することが重要

債権者との交渉

将来利息は基本的に全額カットが可能
元金は原則としてカットできない
残元金を3~5年で分割返済することが一般的

和解書の作成

弁護士・司法書士が和解書を作成し、債権者と取り交わす

返済開始

和解成立日の翌日から返済スタートが一般的
交渉次第で返済開始時期を数ヶ月先にできることもある

任意整理の主なメリットとして、以下のことが挙げられます。

任意整理の主なメリット
  • 毎月の返済額を減らせる
  • 手続きにかかる労力は費用の負担が軽い
  • 財産を処分する必要がない
  • 手続きの対象とする債権者を自由に選べる
  • 借金の理由は問われない
  • 手続きしたことは公表されないので家族等に内緒で行いやすい

一方で、任意整理には以下のデメリットもあるので注意が必要です。

任意整理の主なデメリット
  • 借金の大幅な減額は難しい
  • 安定収入が必要
  • 手続きに強制力がないため交渉に応じない貸金業者もいる
  • 信用情報機関に事故情報が登録され借入やクレジットカードなどを利用できなくなる

まとめると、任意整理は借金総額が比較的小さく、それなりの安定収入がある方に向いている債務整理の方法であるといえます。

川端さん
川端さん

元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

どの債務整理が適しているのかを判断しきれない場合には、とりあえず任意整理をしてみることも可能です。債権者と交渉してみて、返済可能なプランで和解することが難しければ、自己破産や個人再生に切り替えることもできます。

任意整理の費用は事務所によって違う!比較してみよう

ここでは、任意整理の弁護士費用・司法書士費用が事務所によってどのくらい変わるのかを比較してみます。

当サイトがおすすめする5つの弁護士・司法書士事務所における任意整理費用を一覧表にしてみました。

はたの法務事務所アヴァンス法務事務所渋谷法務総合事務所東京ロータス法律事務所ライズ綜合法律事務所アース法律事務所
相談料無料無料無料無料無料無料
着手金無料1社につき11,000円〜(税込)1社につき22,000円~(税込)22,000円~(税込)55,000円~(税込)1社につき22,000円~(税込)
基本報酬1社につき22,000円~(税込)1社につき11,000円〜(税込)1社につき22,000円~(税込)1社につき22,000円~(税込)1社につき22,000円~(税込)1社につき22,000円~(税込)
減額報酬減額分の11%減額分の11%減額分の11%減額分の11%減額分の11%減額分の11%
過払い金報酬回収額の14.08%回収額の22%回収額の22%回収額の22%回収額の22%回収額の22%
スクロールできます

どの事務所も、相場の範囲内の料金設定となっていることがおわかりいただけるでしょう。

ただ、着手金と基本報酬については、「22,000円~」となっていても、負債額などに応じて実際の金額が決まることにご注意ください。

川端さん
川端さん

元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

他に気になる事務所がある場合は、その事務所のホームページなどで料金を確認してみてください。そして、ここでご紹介した比較表と照らし合わせてみるとよいでしょう。

任意整理を依頼するなら弁護士と司法書士のどちらがよい?

任意整理を依頼するなら弁護士と司法書士のどちらがよい?

いざ、任意整理を専門家に依頼する段階になると、弁護士と司法書士のどちらを選ぶ方がよいのかで迷う方も多いことでしょう。

結論をいいますと、弁護士と司法書士の違いにこだわるよりも、債務整理に強い専門家を選ぶことが重要です。

とはいえ、弁護士を選んだ方がよいケース、司法書士を選んだ方がよいケースもたしかにあります。

弁護士と司法書士のどちらを選ぶかを検討する際に注意すべきポイントは、次の3点です。

それでは、ひとつずつみていきましょう。

費用の相場に差はあまりない

任意整理の依頼費用の相場については既に詳しく解説しましたが、弁護士と司法書士とで大きな差はありません。

とはいえ、多少は司法書士の方が費用が低い傾向にあるので、少しでも費用を抑えたい場合は司法書士を選ぶとよいでしょう。

ただし、弁護士事務所の中にも費用が低いところはありますので、まずはさまざまな事務所の費用を調べてみるのがおすすめです。

川端さん
川端さん

元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

弁護士費用・司法書士費用は事務所によって異なるだけでなく、事案の内容(負債額など)によっても異なります。そのため、複数の事務所で無料相談を利用し、依頼費用の見積もりをとって比較してみた方がよいでしょう。

借入額が140万円を超える場合は弁護士

借入額が140万円を超える場合は弁護士

任意整理の対象となる債権者の中に、借入額が1社で140万円を超えるところがある場合は、弁護士に依頼する必要があります。

なぜなら、司法書士は紛争額が140万円を超える事案では、当事者を代理して相手方と交渉することが認められていないからです。

そのため、借入額が140万円を超える債権者については、司法書士が任意整理の依頼を受けることはできないのです。

すべて債権者に対する借入残高が140万円であれば、問題なく司法書士に依頼できます。

川端さん
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元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

消費者金融からの借入残高は、100万円以内の方がほとんどです。しかし、銀行カードローンやクレジットカードについては140万円を超えて利用している方が少なくありません。弁護士・司法書士に依頼する前に、債権者ごとに借入残高を書き出してみて、140万円を超えているところがないかを確認しましょう。

自己破産や個人再生に切り替える可能性があるときも弁護士

自己破産や個人再生に切り替える可能性があるときも弁護士

任意整理手続きの結果次第で自己破産または個人再生に切り替える可能性があるときも、どちらかというと弁護士への依頼がおすすめです。

なぜなら、司法書士は個人再生および自己破産の手続きを代理で行うことができず、裁判所に提出する書類の作成代行しかできないからです。

司法書士のうち「認定司法書士」は簡易裁判所の手続きにおいて代理人になれますが、地方裁判所の手続きでは代理人になれません。

認定司法書士とは

認定司法書士とは、特別な研修を受けて認定考査に合格し、簡易裁判所における民事の裁判手続きの代理業務をすることが認められた司法書士のことです。

自己破産および個人再生の手続きは地方裁判所で行われるため、認定司法書士でも手続きを代理することはできないのです。

そのため、任意整理を司法書士に依頼した後に自己破産や個人再生に切り替えた場合、裁判所での手続きを自分で行う必要があります。

もっとも、自己破産や個人再生の手続きに精通した司法書士も数多くいて、手続きの進行に応じてアドバイスを受けることは可能です。

司法書士には自己破産や個人再生を依頼できないと決めつけずに、債務整理に強い専門家を選ぶ方が得策です。

自己破産および個人再生の手続きを専門家に一任したい場合は、自己破産におすすめの弁護士または個人再生におすすめの弁護士に依頼する必要があります。

川端さん
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元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

個人の債務整理において、弁護士と司法書士のどちらが手続きに精通しているかを一概にいうことはできません。任意整理をするなら、借入額が1社140万円を超える場合を除いて、弁護士か司法書士かにこだわらず、任意整理に強い専門家を選んだ方がよいでしょう。

任意整理の依頼先を探すときに費用以外で注意すべきポイント

任意整理を依頼するなら、信頼できる弁護士・司法書士を選ぶことが大切です。

決して安くはない費用を支払う必要がありますので、弁護士・司法書士の選び方を間違えると不満が残ることにもなりかねません。

信頼できる弁護士・司法書士を探すために注意すべきポイントは、次の3点です。

任意整理で信頼できる弁護士・司法書士を探すためのポイント

ひとつずつ、確認する方法もご説明していきます。

債務整理の実績が豊富にあるか

任意整理で納得できる結果を得るためには、債務整理に強い弁護士・司法書士を選ぶことが大前提となります。

債務整理に強いかどうかは、債務整理の実績が豊富にあるかどうかで判断することをおすすめします。

実績が多ければ多いほど、その弁護士・司法書士には実際の手続きで役立つ専門知識やノウハウがあると考えられるからです。

弁護士・司法書士の事務所の中には、債務整理をほとんど取り扱っていないところも少なくありません。

実績の有無は、必ず確認するようにしましょう。

弁護士・司法書士の実績を確認するためには、まず、事務所のホームページを閲覧してみましょう。

ホームページに実績が掲載されていることもあります。

そうでなくても、債務整理に関する専門的なコラムが多数掲載されている事務所には、相応の実績がある可能性が高いと考えられます。

インターネットだけで実績が判明しない場合は、事務所に直接問い合わせたり、無料相談の際に尋ねたりして確認しましょう。

川端さん
川端さん

元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

信頼できる弁護士・司法書士がすぐに見つかるとは限りませんので、複数の事務所で無料相談を利用して比較することをおすすめします。無料相談を利用した際には、費用の見積もりもとっておきましょう。

説明がわかりやすいか

実績の有無を確認したら、次は弁護士・司法書士が親身に対応してくれるかを確認することが大切です。

無料相談の段階では、専門的な手続きの内容や注意点をわかりやすく説明してくれるかどうかに着目しましょう。

相談者・依頼者のことを親身に考えている弁護士・司法書士なら、法律の素人にもわかりやすい言葉で、わかるまで説明してくれるはずです。

一方、専門用語を多用して早口で説明したり、質問をされると嫌な顔をするような弁護士・司法書士は、親身になってくれない可能性が高いといえます。

弁護士・司法書士が親身になっていないと意思疎通に齟齬をきたし、納得のいく結果が得られないおそれもあるので、注意が必要です。

川端さん
川端さん

元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

弁護士・司法書士の中には、案件の処理に必要な情報のみを聞きたがり、相談者・依頼者の長話は遮ってしまう人が少なくありません。たしかに、案件の処理に必要な情報を伝えることは最も重要です。それでも、相談者・依頼者としては不安に思っていることをすべて伝えたいところでしょう。不要な長話は控えるべきですが、せっかく高い費用を支払って依頼するのですから、不安を受け止めてわかりやすく説明してくれる専門家を選びましょう。

弁護士・司法書士との相性が合うか

最後に、弁護士・司法書士とご自身の相性が合うかどうかも確認しましょう。

弁護士・司法書士も人ですので、性格はそれぞれ異なります。一般的に信頼できる弁護士・司法書士でも、あなたとの相性が合うとは限りません。

例えば、時間がかかってでも任意整理で解決したいとあなたが考えている場合には、債権者とじっくり交渉するタイプの専門家を選んだ方がよいでしょう。

専門家の中には、少し交渉しただけで和解できなければ「任意整理は無理です」といって自己破産や個人再生を勧めてくるタイプも少なくありません。

このようなタイプの弁護士・司法書士は、あなたとは相性が合わないでしょう。

しかし、債務整理の手続きに時間をかけたくないという依頼者にとっては、任意整理の交渉で必要以上に粘らない弁護士・司法書士と相性が合うのです。

弁護士・司法書士との相性が合うかどうかも、実際に無料相談を利用して人となりを確認し、判断するようにしましょう。

川端さん
川端さん

元弁護士
著者の川端 克成さんのコメント

話しやすい弁護士・司法書士の実力が高いとは限りませんので、話しやすさだけに着目するのも危険です。
あくまでも債務整理の実績が豊富にあること前提とした上で、親身になってくれるか、相性が合うかを判断することをおすすめします。

任意整理の費用についてよくある質問

任意整理の費用については、他にもさまざまな疑問や不安があることでしょう。

ここでは、よくある質問に対して、まとめてお答えいたします。

任意整理の費用についてよくある質問
  • 任意整理後に追加で費用を請求されることはありますか?
  • 借金額によって任意整理の費用が変動することはありますか?
  • 任意整理の費用が事務所によって異なるのはなぜですか?
  • 自己破産や個人再生に切り替えれば、任意整理の費用は戻ってきますか?
  • 任意整理を弁護士・司法書士に依頼して費用倒れになることはない?

それでは、ひとつずつみていきましょう。

任意整理後に追加で費用を請求されることはありますか?
事務所によっては任意整理後に追加で費用を請求されることもあります。
例えば、手続き中に債権者から裁判を起こされた場合に追加費用が発生することがあります。
依頼前に、追加費用が発生する可能性があるかないかをしっかりと確認しておきましょう。
依頼すると契約書や費用の説明書を渡されるはずなので、一通り目を通しておくべきです。
契約書や費用の説明書を発行しない事務所では、事前に説明がなかった追加費用を請求される可能性もあるため、注意しなければなりません。
借金額によって任意整理の費用が変動することはありますか?
借金額によって任意整理の費用が変動することもあります。
一般的に、借金額が大きいほど任意整理によって減額される幅が大きくなるため、費用が高額化する傾向にあるのです。
実際の金額は、無料相談を利用するなどして見積もりをとらなければ、正確にはわかりません。
複数の事務所から見積もりをとって比較することで、適正な金額を判断できるようになります。
任意整理の費用が事務所によって異なるのはなぜですか?
任意整理の費用が弁護士・司法書士の事務所によって異なるのは、一律の報酬基準が存在しないからです。
以前は、日本弁護士連合会や各地の司法書士会で、統一的な報酬規程が定められていました。
しかし、弁護士費用については2004年から、司法書士費用については2003年から、統一的な報酬規程が廃止され、報酬が自由化されています。
そのため、弁護士費用・司法書士費用は各事務所が独自に定めているのです。
自己破産や個人再生に切り替えれば、任意整理の費用は戻ってきますか?
既に支払った任意整理の費用は、手続き中に自己破産や個人再生に切り替えたとしても、原則として戻ってきません。
ただし、同じ事務所に引き続き依頼する場合は、自己破産や個人再生の費用が割り引かれることが多いはずです。
別の事務所に自己破産や個人再生を依頼する場合には、基本的に改めて正規の料金を支払わなければなりません。
ただし、取引履歴などの資料が引き継がれた場合には、新たな事務所に支払う料金が割り引かれることもあります。
任意整理を弁護士・司法書士に依頼して費用倒れになることはない?
任意整理の実績が豊富な弁護士・司法書士に依頼すれば、基本的に費用倒れになることはありません。
例えば、消費者金融など5社に対して合計200万円の借金がある場合で考えてみましょう。
任意整理をすれば、ケースによって異なりますが、おおよそ50~80万円程度の利息をカットできる可能性が高いです。
そうすると、20~35万円程度の費用を支払って弁護士・司法書士に依頼することで、十分な利益を得られることがおわかりいただけるでしょう。
借金総額が少ない場合や、元の金利が低い場合などでは費用倒れになるケースがあることも否定できません。
しかし、費用倒れになる可能性がある場合には、依頼前に弁護士・司法書士からその旨の説明があるはずです。
ただし、任意整理の実績があまりない弁護士・司法書士では事前の説明が不十分となる可能性もあるので、注意が必要です。